基本五味を駆使した、おいしい食べ物の組み合わせ
普段食べ物の味を感じる時、基本五味(甘味、塩味、うま味、苦み、酸味)と数えきれない種類の風味のバランスで食べ物の美味しさを判断しています。
風味に関しては種類が多すぎて分かっていないことも多いのですが、基本五味に関してはそれぞれの特徴がある程度分かっています。そして、甘味・塩味・うま味・苦み・酸味は単独で口にすることはほとんどなく、それぞれが影響しあって味を作り出します。
「昆布と鰹節でうま味が倍増するよ」とか、「スイカに塩を付けたら甘さが増すよ」とかが代表で、味の相互作用と呼ばれるものですね。
しかし、それぞれにどんな特徴があるのか知っていても、それぞれの味をどれぐらいの割合で合わせるとよいのかを知っている人は少ないんじゃないでしょうか?
ということで味の相互作用が最大限生かされる割合をいくつか解説したいと思います。
味の相互作用の基本
味の相互作用には大きく分けて、
- 味の相乗効果
- 味の抑制効果
- 味の対比効果
の3つがあります。
相乗効果とは、同じ種類の味同士が互いに味を引き立てあう効果のことです。
例えば、
- 昆布のうま味と鰹節のうま味でよりうま味が引き立つ
- ショ糖の甘さとサッカリンの甘さでより甘さが引き立つ
などです。
抑制効果とは、違う種類の味が両方もしくはどちらかの味を弱める効果のことです。
例えば、
- コーヒーに砂糖を入れて苦みが抑制する
- お酢に砂糖を入れて酸味が抑制する
などです。
対比効果とは、違う種類の味が両方もしくはどちらかの味を引き立てる効果のことです。
例えば、
- スイカに塩やお汁粉に塩で甘さが引き立つ
- お吸い物に塩でうま味が引き立つ
などです。
味の相互作用に関する研究(R)により、もう少し詳しく見ていきましょう。
塩に砂糖(甘味による塩味の抑制効果)
まず塩味に甘味を加えることによる味の抑制効果についてです。塩気のある食べ物にどれぐらいの砂糖を入れたら塩味が消えるのかを調べるために、次の濃度の食塩水を用意しました。
- 1%(汁物の塩分濃度)
- 2%(煮物の塩分濃度)
- 10%(漬物の塩分濃度)
- 20%(醤油の塩分濃度)
そして、それぞれの食塩水に砂糖を加えた結果、
- 全ての食塩水に関して、砂糖を加えるほど塩味は弱まる
- 一定の比率で塩味は抑えられず、塩分濃度が高いものほど塩味を抑えるには大量の砂糖を必要とする
ということが分かりました。
さらに、
- 汁物、煮物(1%と2%の塩分濃度)では、7%以上の砂糖を加えることによって、ほぼ塩味はなくなる
- 漬物(10%塩分濃度)では、10%の砂糖でほぼ塩味がなくなる
- 醤油(20%塩分濃度)では、飽和するまでいくら砂糖を加えても塩味は消えない
ということらしいです。
塩味を抑えるために必要なのは10%の砂糖までで、それ以上加えてもそれほど効果はないようですね。
塩と酢(塩味と酸味の抑制効果と対比効果)
同じく1%、2%、10%、20%の食塩水を用意して、それぞれに酢を加えて味の感じ方を調べます。
その結果分かったことは、
- 塩味は少量の酢で強まる
- しかし、酢が多くなると塩味は弱まる
- 酸味は少量の塩で強まる
- しかし、塩が多くなると酸味は弱まる
どうやら塩味と酸味はトレードオフの関係にあるようですな。
具体的には、
- 1~2%の塩分濃度では、0.01%の酢で塩味が増大、0.05%以上(pH3.4以下)で減少
- 10~20%の塩分濃度では、0.1%の酢で塩味が増大、0.3%以上(pH3.0以下)で減少
とのこと。
砂糖に塩(塩味と甘味の対比効果)
次に砂糖にどれぐらいの塩を加えると、甘味が際立つのかを見ていきます。
そのために、次の濃度のショ糖液(砂糖溶液)を用意します。
- 10%(紅茶を想定)
- 25%(お汁粉を想定)
- 50%(羊羹を想定)
- 60%(ジャムを想定)
結果、
- 塩が多すぎると逆に甘くなくなる
- 少量の砂糖で甘味が際立つ
- 甘いものほど加える塩の量は少なくて良い
ということが分かりました。具体的には、
- 紅茶(10%ショ糖液)とお汁粉(25%ショ糖液)では、0.15%の塩を入れたとき
- 羊羹(50%ショ糖液)では、0.05%の塩を入れたとき
- ジャム(60%ショ糖液)では、全く塩を入れないとき
に甘さが最大になったそうです。
つまり、塩で甘さを際立たせたいときはほんの少量にすることを気を付けて、さらにもともと甘いものほど塩を加える量は少なくしなきゃいけないわけですね。
ジャムぐらい甘いものになると、加えてもいい塩の量が極端に少なくなるために、逆に入れないほうが良かったりするらしいです。
塩味と苦味(抑制効果)
塩味と苦味の関係を調べるために、
- 1%、2%、10%、20%の食塩水それぞれにカフェインを加えた場合
- 0.03%カフェイン(ギリギリ苦みを感じれるレベル)と0.05%カフェイン(やや苦いレベル。煎茶ぐらいの苦さ)に食塩を加えた場合
を比べました。その結果、
- 塩味は苦みによって弱められる
- 苦味は塩味によって弱められる
ということが分かりました。つまり、塩味と苦味は互いに打ち消しあう関係のようですね。
具体的には、
- 0.03%カフェインは、0.8~1%の食塩により苦味より塩味が上回る
- 0.05%カフェインは、2%の食塩により苦味より塩味が上回る
ということらしいです。
ということは柑橘系の果物で苦みを感じることがありますが、塩をちょっと振ることで苦みが抑えられるようですねえ。
酢と砂糖(酸味と甘味の抑制効果)
- 甘味の強いもの(ショ糖5~50%)に酢を加えた場合
- 酸味の強いもの(酢酸0.01~0.5%)に砂糖を加えた場合
を調べました。
その結果は、
- 甘味に酸味を足すと少量でも甘味は弱まり、酸味の量が多くなるほどさらに弱まる
- 酸味に甘味を足すと酸味は弱まる
- 酸味が強すぎるもの(0.3%以上の酢酸溶液)だと、甘味を足してもなかなか酸味は弱まらない
- 0.1%の酢酸に5~10%のショ糖(中国のくずあんや調味すぐらい)の割合が一番好まれた
といった感じです。
甘味と苦味(抑制効果)
- 10~60%のショ糖溶液にカフェインを加えた場合
- 0.03%カフェインと0.05%カフェインに砂糖を加えた場合
を調べました。
その結果、
- 甘味は少量の苦みでも抑えられる
- 苦味によって甘味が増加する対比効果(甘味と塩の関係のようなもの)は一切なかった
- 苦味も甘味によって抑えられるが、そのためには大量の砂糖が必要(0.03%カフェインというわずかな苦味でも、20%以上のショ糖が必要)
とのこと。
どうぞよしなに。
コメント
コメントを投稿