うま味を最大化する鶏ガラスープの煮込み時間はどれぐらい?
ラーメン屋さんが丹念に鶏ガラからスープを取っている光景を見て、きっと煮込む時間が長くなればなるほど、うま味が出て美味しいスープができるのだろうと思ってはいませんか?
一般的にラーメン屋が鶏ガラを煮込む時間は3~5時間ぐらいなそうですが、中には10時間を超えるほど煮込む場合もあるそうで、そこまでやるとさすがに家庭でやるには骨が折れますね。
そこまで煮込むのはその店独自の狙いがあるからなのですが、うま味だけを考えたとき逆に煮込み過ぎるとうま味は減ることが分かっています。
うま味が最大化する時間は?
2001年に秋田県の食品研究所が比内地鶏を使って、鶏ガラスープの加熱時間とうま味成分の違いについて実験(1)してくれております。
結論から書きますと、5時間がうま味の最大化するベストな時間でした。
そして、1時間程度でも十分うま味は抽出されていることも分かりました。
実験のやり方としては、
- 水洗いした鶏ガラを水に対して20%用意する
- 98℃の温度で煮込み続ける
- 1時間おきに成分を分析し、蒸発した水分は足す
- 16時間煮込み続ける
といった感じ。具体的に分析した成分は、
- グルタミン酸やイノシン酸などのうま味成分
- 全窒素量(アンモニウムイオン、亜硝酸イオン、硝酸イオンなど)
- 灰分(リン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などのミネラル)
- その他のアミノ酸
- 全チキンエキス量
のようなもの。要するに、うま味に関わっていそうな成分を片っ端から分析して比べてみたわけです。
それぞれちょっと説明してみると、グルタミン酸やイノシン酸はうま味成分としては言わずと知れたラインナップですね。昆布とか野菜にはグルタミン酸、鰹節とか動物系の食材にはイノシン酸が多く含まれています。
全窒素量とは、醤油の等級を決めるときによく指標にされるのですが、これが多いとうま味を感じやすいとされています。ただ全窒素量の中に含まれている成分の配合によってもうま味の感じ方には違いが生まれるようで、必ずしもこれが多いものがうま味を感じやすいわけではないところが難しいところです。
灰分もまた食材の味に複雑さを与えてうま味に関係していると言われております。小麦粉等級によく使われる成分ですね。
加熱のし過ぎはうま味を分解する
そして実験の結果何が分かったかというと、
- イノシン酸は1~5時間の間でほぼ一定、その後減少
- グルタミン酸やアスパラギン酸、その他の甘味系アミノ酸は、5時間まで増加、その後変化なし
- 全窒素量と全エキス分、苦み系のアミノ酸は16時間まで常に増加
という感じに。
つまり、
- 1時間の加熱で、鶏のうま味の主成分であるイノシン酸は最大に
- 5時間の加熱で、その他のグルタミン酸などのうま味も最大に
- 5時間以降の加熱は、イノシン酸の減少、その他のうま味成分には変化なし
- うま味成分以外のエキスや窒素系成分、苦み系の成分を増加させたいのなら、5時間以上の加熱も効果あり
ということらしいですな。
長時間の加熱によりうま味成分が減少するのは、酵素による影響だと考えられています(2)。
イノシン酸はホスファターゼという肉の中に含まれる酵素によって分解されますが、加熱中に分解されて減少するようです。
また、今回の実験でグルタミン酸の量が減らなかったのは、生姜やネギなどの鶏ガラ以外の食材を入れなかったからかもしれません。
グルタミン酸はプロテアーゼという酵素により分解されますが、これは生姜や玉ねぎなどに含まれています。
普通、鶏ガラスープを作るときは生姜やネギなどの香味野菜と一緒に煮込むことが多いと思いますが、それらの野菜と一緒に長時間の加熱することでグルタミン酸の量も減る可能性はありますねえ。
まとめ
というわけで、鶏ガラスープを作るとき、
- 5時間がうま味成分が最大化されるベストな時間
- イノシン酸だけの抽出を考えるなら1時間でも十分
- 5時間以上煮込むとうま味が減るかもしれない
- うま味じゃなくて鶏のエキスなどにより複雑性を与えたいなら、それ以上煮込んでもいいかもね
ということでした。家庭で簡単にやるなら何時間も煮込まなくても良さそうですね。
どうぞよしなに。
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