冷凍された食材を解凍するときは、むしろ電子レンジを使え!という研究


冷凍庫にしまってあった材料を使うとき、

「しまった!解凍するの忘れてた!」
っていうときってあるじゃないですか。

前日から冷蔵庫などで解凍したり、室温に放置したりしとけば良いのですが、
つい解凍するのを忘れていたりだとか、急なリクエストで必要になったりだとかで、
困った経験をした方って結構いると思うんです。

そんなとき、
諦めて違う材料を使うか、味は落ちるだろうけど電子レンジで解凍して作ろう、
とかなると思うんですが、そんな悩みを持っている人に朗報です。

実は、冷蔵庫や室温で時間をかけてゆっくり解凍するよりも、電子レンジで短時間で解凍するほうがおいしく調理できるぞっ、ていう研究があるんです。

電子レンジで解凍することの意外なメリット

2012年に行われた研究(1)では、100gの切身にした冷凍魚(メカジキ)を-20℃で保管し、
冷蔵庫・室温・電子レンジ・流水・低真空チルド
の5つの方法で内部温度が-1℃になるまで解凍したあとオーブンで加熱。
その後、それぞれどれぐらいおいしさに変化がみられるのかを調査しました。

その結果、電子レンジで解凍したときが一番、ドリップの量が少なかったんです。

ドリップとは、よくスーパーで鮮魚や肉のトレーの下に溜まっている赤い汁のことですね。
あの中にはうま味成分とかが結構溶け込んでるので、できる限りドリップを出さない解凍方法が好まれるわけですね。

このときの電子レンジの操作なのですが、普通に600Wとかで加熱してしまうと逆にドリップが多くなったり(2)、食材の内部が解凍される前に火が通ってしまったり(3)するので、
この実験では、100Wで3分加熱し、それ以降は、「1 分間休止後 30 秒間照射」を×5回繰り返すという方法をとっています。

まあ、たいていの電子レンジに付いてる「解凍ボタン」を押せば、だいたい同じようなことを自動でやってくれると思います。

また、低真空チルドとは、日立の発売している冷蔵庫特有のもので、
冷蔵庫内の気圧を下げることによって氷が昇華し、食材表面と内部の温度差が少なくなるような機能らしいです。

電子レンジ解凍でドリップが少なくなる理由

電子レンジで解凍するとなぜドリップが少なくなるのでしょうか。

それは、100Wとかの低出力で間隔をあけながら電子レンジ加熱すると、
食材の細胞をあまり傷つけないからなんです。

解凍した後の細胞の状態を顕微鏡で観察してみると、

冷蔵庫解凍
 室温解凍
 流水解凍
低真空チルド解凍

に対し、
電子レンジ解凍


電子レンジで解凍したものが一番、細胞と細胞の隙間が少ないことがわかるでしょうか。

意外ですよね。いくら低出力だといっても電子レンジって細胞にダメージ与えまくりな印象が個人的にあったもので。

隙間が少ないということは、それだけ解凍時の細胞へのダメージが少なく、細胞の中から栄養分や水分が流出しにくいということですね。

つまり、電子レンジ解凍はうま味の損失が少ない解凍方法だということが物理的な観察からも分かったわけです。

ちなみに具体的なドリップの量の割合を数値で挙げてみると、
  • 冷蔵庫解凍:5.0±2.7%
  • 室温解凍:3.5±1.1%
  • 低真空チルド解凍:2.3±1.2%
  • 流水解凍:6.2±1.1%
  • 電子レンジ解凍:0.9±0.5%
といった感じで、ドリップの量は
電子レンジ<低真空チルド<室温<冷蔵庫<流水
の順で多くなるようですね。

冷蔵庫解凍のブレ幅が2.7%と最もあるのは、送風も解凍には影響しており(4)、この実験では冷蔵庫内の送風機能がコントロールできず、ブレが生まれたと研究者はコメントしております。

それを考慮すると、冷蔵庫解凍も室温解凍も効果は似たり寄ったりといったところでしょうか。

放置し忘れて食材が痛むといったリスクを除けば、室温のほうが冷蔵庫よりも温度が高くその分早く解凍できるので、冷蔵庫解凍と比較したら室温のほうがいいのかもしれませんな。

一番悪いのは流水解凍で、飲食店とかだと冷凍されたものを流水で解凍するっていうのが結構主流だったりするんですけど、
おいしさの観点からするとあんまりお勧めできない方法だったりするんですね。
まあ、室温や冷蔵庫で解凍するよりも圧倒的に早く解凍できるので、便利ではあるんですがね。

電子レンジ解凍のデメリット

これだけ電子レンジ解凍がおいしさにプラスに働いてくれているのに、なぜ冷蔵庫や室温解凍のほうが主流なのでしょうか。

それは電子レンジ解凍の場合、加熱しすぎのリスクがどうしても残るからでしょう。

この実験では、すべて100gの魚の切身を使いましたが、
これが200gとか量が多くなった場合、何分加熱して何分休ませるを何回繰り返せばよいのか。
また、50gとかと量が少なくなった場合はどうなのか。
これが魚ではなく肉とか他の食材の場合どうなのか。

重さの問題については、電子レンジにはたいてい食材の重さを計算してくれる機能がついているので、「解凍ボタン」を押せば自動的に最適な時間と間隔で加熱してくれるので、
加熱しすぎて少し火が通ってしまったということもあまりないとは思うのですが、そのリスクもゼロではないですよね。

また、解凍ボタンがついていなく自分で出力切り替えの調節ができるタイプなどは、自分で調節しなければいけないので、結構難しかったりしますよね。

プラス食材の種類によって加熱の間隔とかをどうすればよいのかということにも答えはわかりませんし。

ですから、電子レンジで最適な時間で解凍したものよりは品質は劣るが、室温解凍や冷蔵庫解凍が安全な解凍方法として定着しているんでしょうね。


まとめ

どの解凍方法をとるかはそのときの状況とかで決めてもらうとして、
まあ電子レンジでの解凍も適切に行えば、その他の解凍方法よりもおいしく調理できるんだぜ、ということがわかってもらえればと。

それではどうぞよしなに。

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